2026年8月時点では、単なる研究段階だけでなく、実際に販売・導入されているもの、農水省が開発・供給を認定しているものも増えています。特に面白いのが、AI画像認識、レーザー、機械式除草、自律走行を組み合わせた方式です。
農業用「除草ロボット」を徹底調査|2026年版
まず「除草ロボット」と「草刈りロボット」は違う
ここが非常に重要です。
草刈りロボット
畑・果樹園・畦畔などを走り、
「生えている草をまとめて刈る」
ロボットです。
例えば、
- 畦畔
- 果樹園の下草
- 牧草地周辺
- 太陽光発電所
- 農地周辺
など。
一方、
除草ロボット
こちらは、
「作物を残して雑草だけを除去する」
ことを目的とします。
例えば、
🌱 キャベツ
🌱 ニンジン
🌱 タマネギ
の間に生えている雑草だけを狙います。
そのため、
AI画像認識 → 作物と雑草を判別 → 雑草だけを除去
という高度な技術が必要になります。
農水省のスマート農業技術カタログでも、草刈り機だけでなく「株間除草機」「自律走行型除草機」などが独立した技術として位置付けられています。
除草ロボットは大きく5種類
現在の技術を分類すると、次のようになります。
| 種類 | 仕組み | 実用化 |
|---|---|---|
| ① 自動草刈り型 | 草をまとめて刈る | ★★★★★ |
| ② 機械式除草型 | 刃・爪などで雑草を取る | ★★★★☆ |
| ③ AI精密散布型 | 雑草だけに薬剤を散布 | ★★★★☆ |
| ④ レーザー除草型 | AIで雑草を発見してレーザー照射 | ★★★☆☆ |
| ⑤ AI自律除草型 | AI+ロボット+機械除草 | ★★★☆☆ |
この中で、今後最も面白いのは②~⑤です。
① 自動草刈りロボット
これは最も実用化が進んでいるタイプです。
設定したエリアを自動的に走り、
草刈り → 充電 → 草刈り
を繰り返します。
日本でもすでに農業用途で導入されています。
農水省の技術カタログには、和同産業の「KRONOS」が掲載されています。
最大3,000㎡、約3反の作業エリアに対応し、バッテリーが減ると自動的に充電ステーションへ戻り、充電後に作業を再開します。最大傾斜30度にも対応しています。
② 機械式の「本格的な除草ロボット」
こちらが農業ロボットとして非常に重要です。
例えば、
という畑をロボットが走ります。
カメラなどで作物の位置を認識し、
作物を避けながら、株間・畝間の雑草を機械的に除去
します。
FarmDroid FD20
デンマークのFarmDroidは、この分野でかなり面白い企業です。
「FD20」は、
播種+除草
を一台で行う自律走行ロボットです。
農水省の2026年の海外スマート農業調査によると、FD20は、
- 自律走行
- RTK-GPS
- 畝間除草
- 株間除草
- 電動
- ソーラーパネル
- 最大24時間稼働
- 50品目以上に対応
などの特徴があります。
さらに同資料では、2025年時点で23カ国、500台超が導入され、日本でも北海道十勝で2025年から稼働を開始したとされています。導入コストの公表値は本体約9.7万ユーロ+RTK基地局等です。
これはかなり重要です。
「研究中のロボット」ではなく、既に海外で一定台数が使われているロボットだからです。
③ AI+精密散布
これは「雑草を抜く」のではありません。
AIで、
これは作物
これは雑草
と判断して、
雑草のところだけ農薬を散布する
方式です。
代表的なのがスイスの
Ecorobotix
です。
Ecorobotix「ARA」
ARAは非常に面白い機械です。
植物を1株単位で認識し、必要な場所だけを狙って散布します。
公式情報では、6×6cm単位の精密散布を行い、農薬などの使用量を最大95%削減できるとしています。
さらに2026年3月には、ARAの世界販売台数が1,000台に到達したと同社が発表しています。
つまり、
AI除草・精密散布技術は既に商業化がかなり進んでいる
と考えられます。
④ レーザー除草ロボット
そして現在、世界で特に注目されているのが、
レーザー除草
です。
代表企業がアメリカの
Carbon Robotics
です。
Carbon Robotics「LaserWeeder」
これはかなり凄い技術です。
仕組みは、
カメラ
↓
AI
↓
雑草を認識
↓
レーザー照射
↓
雑草の成長点を破壊
です。
農薬を使わずに雑草を処理します。
同社の現在の製品「LaserWeeder G2」には、100以上のAI深層学習作物モデルが搭載され、モデルによって雑草を識別します。
大型モデルでは、
1時間当たり最大約2.43ha
の処理能力を公表しています。
また、同社によればLaserWeederは2022年の商用化以降、北米・欧州・豪州の100社以上の農家が所有・運用しています。
Carbon Robotics「LaserWeeder」公式サイト
レーザー除草の凄いところ
従来は、
畑全体に農薬を散布
していました。
レーザー方式では、
という処理が可能になります。
つまり、
「農薬を撒く」のではなく「雑草を狙撃する」
という発想です。
⑤ AI+機械式除草
オランダの
Odd.Bot
も注目企業です。
「Maverick」という完全自律型の除草ロボットを開発しています。
AI画像認識で雑草を発見し、機械的に雑草を除去します。
同社によると、約2mmの精度で雑草を認識・除去し、除草剤を使用せず、24時間で50万本以上の雑草を除去できるとしています。
対象として、
- タマネギ
- ニンジン
- ビート
- チコリ
- パースニップ
などが挙げられています。
Naïo Technologies
フランスのNaïo Technologiesも有名です。
自律走行ロボットによって、
- 播種
- 畝間除草
- 栽培管理
などを自動化しています。
代表的な「ORIO」は、RTK測位とカメラによる位置合わせを組み合わせ、除草機などの農具を装着して自律作業する方式です。
ただし重要な注意点があります。
Naïoの現在の公式ページでは、ORIOとJOは2026年6月15日以降、Naïo SASによって製造・販売・サポートされていないと明記されています。
したがって、古い記事だけを見て「現在販売中」と判断しないほうがよいです。
Garford「Robocrop」
イギリスのGarfordも面白い企業です。
こちらは完全な自律ロボットというより、
AI・画像認識+精密機械除草
という方向です。
カメラで作物を認識し、除草機を作物の位置に合わせて動かします。
最新のRobocrop AIでは、
カラー+赤外線+深度情報
を組み合わせて作物を認識する技術を採用しています。
従来型のRobocropでは画像を毎秒30フレームで解析し、10~15mm程度の精度で作物列を追従するシステムも展開されています。
日本でもかなり動き始めている
ここが今回の調査で特に注目すべきところです。
日本では農林水産省が、
「自律走行型除草機」
を重要なスマート農業技術として位置付けています。
2025年5月に認定された開発供給計画には、
株式会社FieldWorks
の「親子式ウネカル」があります。
FieldWorks「親子式ウネカル」
これは非常に面白い日本の除草ロボットです。
考え方は、
親機
↓
子機を運ぶ
↓
子機が畝間を除草
↓
作業終了
↓
子機が親機へ戻る
↓
親機が次の畝へ移動
という方式です。
つまり、
1台の親機+複数の小型ロボット
という「親子方式」です。
農研機構の研究開発事業では、LiDARによる自己位置推定、複数子機の制御、散布作業への拡張などを開発し、除草作業時間80%削減を目標としています。2026年度内のテスト販売、2027年度内の本格販売が計画されています。
日本では「アイガモロボ」も面白い
水田では畑とは違ったアプローチがあります。
2025年5月の農水省の認定企業には、
NEWGREEN
の新型アイガモロボがあります。
水田で水管理と連携しながら除草時間を削減する自動抑草ロボットです。
つまり、
畑=AI・レーザー・機械除草
だけではなく、
水田=水管理+ロボットによる抑草
という別の方向もあります。
日本の研究もかなり進んでいる
2026年には、農研機構などによる
「AIによる作物認識を用いた自動除草ロボット」
についての研究論文も公開されています。
キャベツを対象に、
- 畝間
- 株間
- 作物認識
- 物体検出
- 自律走行
などを組み合わせた自動除草ロボットの研究です。
J-STAGE「AIによる作物認識を用いた自動除草ロボットの設計と実装」
レーザー除草は日本でも研究中
農研機構では、
可視光半導体レーザー+自律走行
による除草・害虫防除ロボットの研究開発も進めています。
目標は、
- 雑草検出率90%以上
- レーザーによる雑草枯死率90%以上
- 除草率80%以上
- 夜間作業
- 軽トラック搭載可能
など。
さらに令和10年度中、つまり2028年度中の市販化を目標としています。
これは非常に注目すべき研究です。
NTTドコモも除草ロボットを研究
意外な企業としてNTTドコモがあります。
ドコモは、
AI+ロボティクス
を使った農業技術を研究しており、作物列を認識して畝間を自律走行する除草ロボットを開発しています。
ドローン画像から雑草・病葉を検出する技術とも組み合わせています。
つまり将来的には、
ドローンが畑を上から見る
↓
AIが雑草の場所を特定
↓
地上ロボットに情報を送る
↓
ロボットが雑草を除去
という「空と地上のロボット連携」も考えられます。
2026年の重要な動き
農水省の2026年の海外スマート農業調査を見ると、除草分野では、
| 企業 | 国 | 技術 |
|---|---|---|
| FarmDroid | デンマーク | 自動播種+株間・畝間除草 |
| Ecorobotix | スイス | AI精密スポット散布 |
| Naïo Technologies | フランス | 自律走行除草 |
| ARVAtec | イタリア | 自律走行型除草 |
| Carbon Robotics | 米国 | AI+レーザー |
| Odd.Bot | オランダ | AI+機械式除草 |
| FieldWorks | 日本 | 親子式自律除草 |
| NEWGREEN | 日本 | 水田抑草ロボット |
などが注目対象になります。
農水省自身も、露地野菜・花き作の「除草及び防除」について、株間除草機・自律走行型除草機などで労働時間80%削減に資する技術を重点開発対象にしています。
さらに面白いのが「低価格ロボット」
現在の農業ロボットの大きな問題は、
高いこと
です。
例えばCarbon Roboticsのような大型機械は、大規模農家向けです。
一方、2026年8月に発表された研究では、廃EV部品を再利用して農業ロボットを作り、動力系・車体の部品コストを450ドル未満まで下げる研究も発表されています。AIによる雑草認識も搭載しています。
これはかなり重要な方向性です。
なぜ「安い除草ロボット」が重要なのか
日本の農業はアメリカの巨大農場とは違います。
日本では、
- 小規模農地
- 狭い畝
- 傾斜地
- 不整形圃場
- 果樹園
- 茶畑
などがあります。
巨大なトラクターを入れられない場所も多い。
だから日本では、
大型1台で全部やる
より、
小型ロボットを複数台動かす
方式のほうが向いている可能性があります。
これはFieldWorksの「親子式ウネカル」の考え方ともつながります。
そして「茶畑」はかなり面白い
今回の調査から見ると、私は茶畑×除草ロボットはかなり研究価値があると思います。
茶畑には、
- 畝間除草
- 株元除草
- 草刈り
- 防除
- 運搬
- 生育センシング
があります。
例えば、
ロボット1
畝間を自動走行
↓
雑草をAI認識
↓
機械式除草
ロボット2
茶畑を巡回
↓
カメラ撮影
↓
AIで生育状態を分析
ドローン
上空から撮影
↓
病害・生育ムラを発見
という組み合わせが考えられます。
さらに将来は「人型ロボット」も?
先ほど作ったアイキャッチのような、
人型ロボットが畑に入り、しゃがんで雑草を一本ずつ抜く
という方式も将来的には考えられます。
ただし、現時点では農業の除草では、
人型ロボットより車輪型・小型自律走行ロボットのほうが圧倒的に現実的
です。
理由は、
- 安い
- 軽い
- 転倒しにくい
- バッテリーが長持ち
- 制御が簡単
- 畑で走らせやすい
からです。
したがって、
2026~2030年:車輪型ロボット
↓
2030年代:より高度なAIロボット
↓
その先:人型・脚型ロボット
という順番になる可能性が高いと思います。
現時点での注目度
私なら2026年時点で、次のように評価します。
| 技術 | 実用性 | 将来性 | 注目度 |
|---|---|---|---|
| 自動草刈り | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
| 機械式畝間除草 | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★★ |
| AI精密散布 | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ |
| AIレーザー除草 | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★★ |
| 水田抑草ロボット | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ |
| 人型除草ロボット | ★☆☆☆☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ |
| 小型群ロボット | ★★☆☆☆ | ★★★★★ | ★★★★★ |
結論
今回調べてみると、除草ロボットは単なる「未来の農業機械」ではありません。
すでに、
販売・導入段階
に入っている技術があります。
特に重要なのは、
① FarmDroid
② Carbon Robotics
③ Ecorobotix
④ Odd.Bot
⑤ Naïo Technologies
⑥ FieldWorks
⑦ NEWGREEN
⑧ 農研機構
あたりです。
そして日本では農水省が、自律走行型除草機・株間除草機などを、労働時間80%削減を目標とする重点技術として位置付けています。
さらに2026年には、AI画像認識、LiDAR、レーザー、RTK-GPS、エッジAIなどを組み合わせた研究が進んでいます。
「人間が炎天下で草むしりをする」→「小型ロボットが24時間畑を巡回する」
という変化は、かなり現実味を帯びてきています。
特に日本では、「小型・低価格・狭い農地対応」の除草ロボットが大きなビジネスチャンスになる可能性があります。

